大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和60年(ネ)531号 判決

控訴人(被告) 有限会社東天紅

被控訴人(原告) 株式会社東天紅

原審 名古屋地方昭和五九年(ワ)第二〇八八号(昭和六〇年七月二六日判決、一七巻二号三三三頁参照)

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

控訴費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項同旨。

第二当事者の主張

当事者双方の事実上及び法律上の主張は、以下に付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

(控訴人の主張)

一 控訴人が、自己を表示するための識別標識である商号をチラシ又は店頭に掲げる行為と、商品に関する標章とは厳然と区別されるべきであつて、被控訴人の商標権は、控訴人の商号使用まで制限することはできない。

二 控訴人の商標は、被控訴人の商標登録出願の際、控訴人の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものである。なお、右の場合の「周知性」は、商標法四条一項一〇号の場合には二者択一の関係にある登録について先願者の利益を守るためこれを厳しく解すべきであるのと異り、先使用権を認めても商標権者の蒙る不利益は使用が並行するに過ぎないから、その意味をより緩やかに解すべきである。

第三証拠関係〈省略〉

理由

一  当裁判所も被控訴人の本訴請求は理由があり、これを認容すべきものと判断するが、その理由は以下に付加、訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

(一)  原判決七枚目裏六行目(編注、一七巻二号三三八頁八行目)の末尾に「控訴人は、右は控訴人の商号を使用するに過ぎないもので、被控訴人の商標権により制限さるべきものではない旨主張するが、これを単なる自己の名称の表示以外の意味をもたないものと解しえないことは、前認定のとおりであり、控訴人の主張は採用できない。」を加える。

(二)  同八枚目表末行(同上、三三八頁一〇行目)の「被告は」から同裏一行目の「主張しないし、」までを削る。

(三)  同九枚目表末行(同上、三四〇頁三行目)の「勘案すれば、」の次に「仮に、その周知性の意味を控訴人主張の如く解したとしても、なお、」を加える。

二  よつて、右と同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 黒木美朝 西岡宜兄 喜多村治雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例